初手まとめ
ハードロールDKNは吉山が開発したモルトエキスの代わりに大根おろしを使ったリーンタイプ寄りのパンです。栄養的には一般的なハードロールと比べ、食物繊維とカリウムの含有量が多く、一方でナトリウムの含有量が少ない。減塩、野菜摂取増が叫ばれる現代の栄養事情において実に都合の良いパンなのです。大根の風味はほぼないけど複雑な味わいがして美味いよ。
背景
パンは材料の構成から大雑把にリッチタイプとリーンタイプに分けられます。リッチタイプはお金持ちが食べる高級なパンというわけではありませんよ。砂糖、卵、牛乳、バターなどが多めに使われるパンで、バターロールなど割りと一般的なパンです。一方、リーンタイプはその逆でそれらの材料が少ないパンでフランスパンなど硬めなパンが多い。
基本的にリーンタイプのパンの主原料は小麦粉、塩、水、パン酵母なのですが、実際のところこれだけでは上手く（短時間で）パンは作れません。理由はパン酵母の餌となる糖類が不足して、勢いよく発酵（炭酸ガスの発生）ができないからですね。
そこで登場するのがモルトエキス（モルトシロップ）なのです。モルトとは麦芽のことで、モルトエキスは麦芽をあれやこれやした抽出物です。モルトエキスは麦芽糖が含み、重要なデンプンを分解する酵素（アミラーゼ）を含んでいます。これにより、酵母へ糖類を無尽蔵に供給することができるそうな。なお、小麦粉にも微量のアミラーゼが入っているので、モルトエキスを入れないと絶対にパンが出来ないわけではないよ。
ハードロールはリーンタイプのパンで教科書的にはモルトエキスをついますが、手元にモルトエキスがなかったので大根おろしで代用したのがハードロールDKNです。大根もジアスターゼと呼ばれるアミラーゼが豊富に入っているから、奇を衒ったわけではなく自然な発想なのですよ。
作り方など
レシピは専門学校のときに貰ったパンの教科書をベースにかなり変更した。とりあえず実際の作り方は栄養ブラウザに登録してあるので詳細はそっちで見てくだい。→ハードロール DKN。
大根にはアミラーゼだけではなく、たんぱく質分解酵素も入っているので、そのグルテン形成への影響が懸念されます。最初は強力粉200gに対しおろしの汁を5gから初めて、最終的には大根おろし150gに達しました。大根は95%が水分なので、事実上の上限いっぱいまで入れてもパンができるようです。
また、グルテンの形成に陽イオンが必要なのですが、大根おろしからからも結構イオンがやってくるのでその辺も影響あるかもしれません。とりあえずカリウムがあるのでナトリウムを少し減らしてもいいかな？ってことで塩分をざっくり半分にしています。
あと、きれいな焼き色はアミノ酸と糖類のアミノカルボニル反応によるものなので、焼色が付いているということはそこそこ糖類が存在するということでしょう。
栄養
栄養も細かいところは栄養ブラウザ（上記リンク）で見てね。完全栄養表示モードで栄養パレットを変更すると色々見られるよ。
エネルギーは計算しやすいという理由で１個約200kcalに調整。栄養にインパクトがあるのは大根おろしとスキムミルク。あとは一般的なパン作りに沿っているのでそんなに変わらないはず。大根おろしを入れたことで食物繊維が倍、カリウムも1.5倍くらいに強化。スキムミルクをバサッと入れたのでたんぱく質、カリウム、カルシウムも強化されている。ハードロール DKN一個は焼き上がりが約80-85gで食塩相当量が0.5g。5枚切り食パン１枚（約70g）が1g弱なのを考えると結構頑張ったと思う。
官能性
テクスチャはざっくり言うとソフトフランスパンですね。表面は固くてザラザラだけど、ガチのフランスパンよりは柔らかいので気合を入れなくても噛み切れる。大根おろしの白い繊維が細かい模様として浮き出ているが舌で感じることは不可能。中も変わったところはない適度な弾力。なんとなく透明度が高いような気もするが、比較対象がないのでなんとも言えんです。
香りは焼き立てだと頑張れば奥底に大根の風味を感じられるけど、時間が立つと私ごときの鼻ではもう判らない。甘みと塩味は少ない素朴なパンの味かつ、複雑な味わいなので私の語彙力では説明できん。カリウムと酵素増々からくるよくわからない分解物の影響か、たぶん。そのままでも十分食べられる。もちろんハム、チーズ、玉ねぎなどでサンドを作っても満足度激高ですぞ。
あとがき
いかがでしたか？久しぶりの更新でハードロール DKNを紹介しました。正直パン作りはコスパとかタイパとか考えたらやってられませんが、今回みたいなワケの分からんパンは売ってないので作るしかないです。とりあえず電子レンジにオーブン機能がついていたら気軽にパン作りにチャレンジしてみましょう。初期投資額はそんなに高くないよ。
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