ビタミンCが壊れるということ

初手まとめ

 ビタミンCことアスコルビン酸は思ったより粘り強く壊れない。ただし、酸化した状態で加熱するとあっけなく壊れ、栄養素として期待される抗酸化能を失う。調理時の流出まで考えると、結局これまで言われているように果実の生食が最強か。あとソリッドなじゃが芋は酸化にも流出にも強い。

枕的な話

どうも、吉山です。今回はちょいちょい耳にする「ビタミンCが壊れる」ということの話。お恥ずかしいことに、私はこの壊れるということをほぼ理解していなかったので少しまとめておきます。

 栄養に関しても科学に基づいた考え方がオススメされている昨今ですが、正確な表現でも相手に伝わらなければ意味がないので、ついついイメージで話をしてしまいがちです。壊れると聞くとなんとなく「分解される」とか「不活性化する」などとにかく本来の機能が働かなくなるイメージを持ちます。

 ビタミンCの機能とは何かと言えば大雑把に抗酸化機能と生理活性物質としての機能の2つでしょうか。で、大体ビタミンCが壊れるという文脈では前者の抗酸化機能を失うことを指している気がします(わたくし所感)。

 ビタミンCの真名はアスコルビン酸で、有機酸の1種で水酸基(-OH)が2本生えています(構造式を見ると気絶するので簡略化してます)。この部分が水中ではえらく不安定で直ぐに水素(H)を放り出してしまいます。この現象は電子を失うとか色々表現されますが、何にしろ、このおかげで他の物質が酸化されるのを邪魔したり、他の物質から酸素をもぎ取ったり(還元)できるわけです。

 抗酸化作用は身代わりの術なので、アスコルビン酸自体は酸化してモノデヒドロアスコルビン酸、更にデヒドロアスコルビン酸になってしまいます。こうなることもう抗酸化の力は残されていません。これらのことを多分ビタミンCが壊れると言っているのだと思います(実際は違う)。

 以前、専門学校の実習で人参はビタミンCを壊す酵素含んでいると習った記憶があります。その時は「ほーん」と思っていましたが、その酵素の名前はアスコルビン酸酸化酵素で実際はビタミンCを酸化させるだけで破壊(分解)しているわけではありませんでした。

 いや、せっかくのビタミンCが体に入る前から酸化されたら困るやんか、抗酸化能がないビタミンCなんて何の役に立つのよ?と感じる方もいるかも知れませんが、安心してください。人間の体はビタミンCは作れませんけど、酸化されたビタミンCを酸化されていない状態に戻す術は持ち合わせています。

 グルタチオン-アスコルビン酸回路は対過酸化水素用の仕組みで、その過程でなんやかんやビタミンCの酸化状態をグルタチオンに押し付けて、ビタミンCは酸化されていない状態(還元状態)に戻り抗酸化能が復活します。なので、「ビタミンCが壊れるからサラダに人参入れない」とか言わずに人参も一緒にもしゃもしゃ食べてよし。

 なお、ビタミンCが失われやすいのは本当で、それは水溶性なのが原因。食べる前だと煮汁やマリネ液など、食べたあとには尿に溶けてふらっと出ていってしまうのよ。

 


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