1996年の集団食中毒以降、忘れた頃にニュースになる病原菌大腸菌。一体こいつらは何なんでしょうか。Enterohemorrhagic Escherichia coli(EHEC)と言われ、一言で言うと毒素を作る能力を獲得した大腸菌群です。大腸菌はO抗原とH抗原を組み合わせて分類されて、日本で病原性大腸菌として有名なのはO-157です。これはO型の157番と言う事です。他にもO-111やO-026等も合わせて大体毎年20件前後、各地で食中毒を引き起こしています。その内、重篤な症状のケースがニュースになるわけですね。こいつらの作る毒素はベロ毒素や志賀毒素で元々は赤痢菌が産生する毒素なのですが、どういうわけか(ファージを介した伝播らしいです)大腸菌が獲得してしまってます。これらの毒素は細胞に入るとリボゾームでたんぱく質の合成の邪魔をします。たんぱく質の合成が出来ないと実質細胞は開店休業ですし、細胞分裂が盛んな腸の表面などは新しい細胞の供給が遅れて組織が崩壊します。そうなると激しい腹痛と出血が起きて、病院直行です。
更に、子供やご老人など体力の無い場合、回復が間に合わずこの毒素が腸管に止まらず血流に乗ってしまうことがあります。すると、何故か腎小体の毛細血管が詰まってぶっ壊れます。更にそこを強引に通ろうとする赤血球もぶっ壊れ溶血性尿毒症症候群 (Hemolytic Uremic Syndrome, HUS)を発症します。また、毒素が脳に回ると中枢神経がやられて脳症を発症します。ここまで合併症が出てくると死亡する可能性が出てきます。恐ろしい子。毒素は怖いのですが、大腸菌本体はグラム陰性菌で細菌業界では弱者です。殺すのは比較的簡単で、アルコールでもハイターでも加熱でも直ぐ死んじゃいます。普通に加熱調理すれば何の問題もないです。とは言え、大腸菌は名前の如く我々の大腸には当然いますし、糞がある所全てにいると思って良いでしょう。特に土付き有機野菜とかちょい気をつける必要があるかも。あと病原性大腸菌の嫌な能力として酸への耐性があります。普通の大腸菌は食べても胃酸で大部分は死滅するんですが、病原性大腸菌は少数(100個くらい?)でも胃突破して腸に到達しちゃうのでした。油断大敵。食中毒症状の発症は大腸菌が腸に到達して、そこで増殖してからなので結構時間(2日以上)かかります。
最近報道された食中毒事件では、お総菜屋のポテトサラダが原因だそうです。客が好きな分だけ取る量り売り形式なので、どこからでも混入しそうな気がするなぁ。今回はどうか知らないけどポテトサラダに限らず、子供が指を突っ込める位置に食品を置くのはかなり危険な気がするぜ。今後、お総菜の売り方が変わるかもしれませんね。
気になった人は厚生労働省の腸管出血性大腸菌Q&Aを見てみましょう。
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